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はじめに
健康長寿を実現するためには,生活習慣の改善が何より大切である.従来の健康づくりでは,少人数の人しか参加も継続もできないような,特殊な運動を中心としたプログラムが実行されている.しかし,これでは人口の高齢化に伴って増大する医療費などの諸問題を効率よく解決することはできない.そこで,国際的な展望に立って新しいガイドラインを作成するため,2000年より群馬県中之条町において,高齢者の日常的な身体活動と心身の健康に関する学際的研究(中之条研究)を行っている1〜14).
中之条研究における潜在的な対象者は,重篤な認知症や寝たきりの人を除いた65歳以上の全地域住民(約5,000名の参加者)であった.全参加者(母集団)は,年1回,従来型の身体活動質問票に記入し,さらに任意に選ばれた約1割の対象者(下位集団)については,身体活動を10年以上,1日につき24時間,連続して評価した.なお,この下位集団は,母集団と年齢も性分布も違わなかった.客観的な測定は,特注の1軸加速度センサー内蔵の身体活動計(スズケン社製ライフコーダ修正版)(以下,体動計)を用いて行った(図1).この体動計は,信頼性と妥当性に関して他の歩数計や加速度計に比べて勝り,統制と自由生活の両状況下で歩数(型内信頼性0.998;絶対精度±<3%)と歩行活動の強度の両方を一貫して精確に見積もる.これまでの中之条研究の主な目的は,高齢者の健康と最も緊密な関係がある身体活動の総合的パターンを明らかにすることであった.
本稿では,この広範な研究経験に基づいて,高齢者における日常身体活動パターンと身体的・心理社会的・精神的・代謝的健康要素との関係を概説する.また,歩数と軽度および適度な身体活動の量との相互関係や,身体活動の強度や総量を変える心理学的・社会学的・気象学的因子について述べる.
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