総説
高齢者における日常的な身体活動と心身の健康:中之条研究
青栁 幸利
1
,
朴 眩泰
1
,
朴 晟鎭
1
,
唐澤 伸子
2
,
安原 あづさ
2
,
桑原 奈緒子
2
,
篠原 寛子
2
,
水出 久美子
2
,
小野 里悦子
2
,
伊能 俊之
2
,
山田 克仁
2
,
小池 ゆかり
2
,
齋藤 視永子
2
,
関口 喜佐子
3
1東京都老人総合研究所老化制御研究チーム(運動科学研究グループ)
2中之条町役場町民生活課生活環境チーム(保健センター)
3中之条町役場町民生活課国保介護チーム(地域包括支援センター)
pp.1042-1053
発行日 2009年12月10日
Published Date 2009/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101308
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■要旨
本稿では,高齢者の日常的な身体活動と心身の健康との関係およびそのような活動に影響を及ぼす諸要因に関する学際的研究(中之条研究)を紹介する。現下の中之条研究からの横断的データによれば,高齢者の健康全般は日常身体活動の量(1日の歩数の年間平均)と質(1日の中強度[安静時代謝量の3倍以上]活動時間の年間平均)の両方と関係がある。男性では,健康の度合いは1日の中強度活動時間のほうが1日の歩数よりも密接に関係しているが,対照的に女性では,歩数のほうが中強度活動時間よりも関係は密接である。また,男女とも比較的良好な健康状態に関連する身体活動閾値は,「からだ」のためのほうが「こころ」のためよりも高い:それぞれ歩数>8000対>4000歩/日かつ/または中強度活動時間>20対>5分/日。換言すれば,からだの健康を保つには1日あたり少なくとも20分の適度な(時速約5kmでの)ウォーキングとさらに50~60分以上の軽度な活動が必要であるが,こころの健康はずっと少ない量の緩やかな身体活動でも保てるようだ。ただし,日常身体活動の強度と総量はともに気象要素,特に降水量と平均気温に左右される。降水量が増加するにつれて,身体活動は約4000歩/日まで指数関数的に減少する。そして降雨の影響を除くと,1日の歩数は平均気温17℃前後をピークに,これより気温が高くても低くても二次関数的に減少する。したがって,高齢者の日常身体活動を増やすための介入を計画する際は,微小気候の季節変化を考慮すべきである。筆者らは現在,本稿で紹介した研究成果に基づいてオーダーメイドの予防医学システムを開発している。
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