第51回 日本リハビリテーション医学会 学術集会 《医療倫理・安全研修講演》
臨床研究と倫理的留意点
松浦 晃洋
1,2
1藤田保健衛生大学疫学・臨床研究倫理審査委員会
2藤田保健衛生大学大学院医学研究科分子病理
1Fujita Health University Institutional Review Committee of Epidemiological and Clinical Research
2Molecular Pathology, Fujita Health University Graduate School of Medicine
pp.634-639
発行日 2014年10月18日
Published Date 2014/10/18
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はじめに
医学は数学や物理学のような厳密科学でない.一般原理はあるもののすべての人にあてはまらない.例えば,外国で開発されたある薬剤やワクチンはほぼ100%の効果があったものを,日本で使ってみると85%の人に効果があるが15%の人には効かない.数%の人に予想しなかった副作用が現れることもある.医学は本質的に経験に基づく.それゆえ,自分の接する個人・集団について,治療・手技が有効か否かについては常に観察と評価が必要である.医薬品,医療機器,手術手技などの新しい診断治療法の開発は過去50年にめざましい進歩を遂げている.一方では,新しく起こった分野,リハビリテーション(以下,リハ)医学,疫学,医療システム,医療に関わる法律,医療の社会的・文化的側面については未解決の問題が多い.医の倫理もそういった未発達の分野であるとともに,常に変容する社会的要因・常識により,常に対応を求められる.特に,自己決定権autonomyの主体が医療者の独立性を意味し,弱者である患者を差別せず,保護し適切な医療を提供するというパターナリズムの発揮だけでなく,患者(被験者)の自己決定権が世界医師会のリスボン宣言で採択されてから,より適切に対処すべき難しいことが増えた.まさに医の倫理は時代と共にある.ここでは,医学研究の重要性,医の倫理(医療者・研究者の立場),倫理委員会などを解説し,特に,リハ医学領域の研究において留意すべき点について考えてゆきたい.
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