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はじめに
「自分の体を動かす」ことは,健常者であれば無意識に行っていることで,体を動かすためにはどこの筋肉をいつどのように活動させるかということは考えることはない.さらに,たとえば指を動かしている筋肉がどこにあるのかを知っている人も少ないのではないかと思う.このため,脳がどのように体を動かしているかについては,自分の脳でありながら良く分からないのが現状である.しかし,ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)を構築する場合,脳のどこから信号を計測し,計測した神経活動からどのように動きに変換するかを考えなければいけない.脳では,運動意図や運動計画,そして,それを実現する運動指令を計算し,各筋肉に送っている.運動意図が分かれば,人間の行動を介すことなくそれを実現することが可能となる.たとえば,両手がふさがっていて車のドアを開けることができなければ,車がドアを自動的に開くことで,自分の手を動かさなくても目的が達成される.運動意図がどこでどのように表現されているかが分からないため現実には難しいが,一次運動野からは筋肉へ運動指令が送られていることは解剖学的に分かるため,一次運動野の活動から体がどのように動くか推定することは可能である.しかし,両手がふさがっている場合,手を動かすことができないため,車のドアを開ける信号を一次運動野から抽出するのは困難となる.このように,BMIを運動制御という立場で考えた場合,脳のどこの部位からどのような情報を取り出すことが可能であるか,また,その神経活動はどのように情報を表現しているのかが分からなければいけない.さらに,筋肉への指令が分かったとしても,筋肉がどのように張力を発生し,関節のトルクに変換され,体を動かしているのかは別の問題であり,難しい問題となっている.本稿では,我々が提案している,筋骨格系モデルを用いた運動制御モデルについて概説し,筋肉の活動からどのように運動が生成されるのか,また,脳活動からどのように筋肉活動を推定するのかについて述べる.
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