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はじめに
リハビリテーション(以下,リハ)科医として30年臨床に携わってきたが,近年脊髄損傷のリハ治療の現場では,高齢者の骨傷のない頚髄損傷,不全四肢麻痺が急増している印象を強く受ける.事実過去1年間の当院の脊髄損傷入院患者の83%を高齢者が占めている.この背景には超高齢社会の登場,第一次ベビーブームの団塊の世代が60歳を超えてきていることが挙げられよう.我々は過去15年間脊髄損傷のデータベース作りに労災病院群の横断的な脊髄損傷治療のアウトカムを検証する目的で,年間300例以上の症例を登録し,疫学的特徴の推移や,リハ治療について精力的に発表してきた.開発当初はちょうどアメリカの脊髄損傷のmodel systemとThe National Spinal Cord Injury Statistical Center(NSCISC)を中心としたデータベース作り1)に触発されながら,後半は,The American Spinal Injury Association(ASIA),The International Spinal Cord Society(ISCoS)の国際的評価基準に歩調を合わせて研究を推進してきた.今回のシンポジウムでは,学術集会の基本テーマであるimpairmentに切り込むリハとは少し趣向を変えて,その周辺に存在する多くの課題を明らかにし,リハ治療における問題点を明確にすることで,再生医学が実際の臨床応用の日程に登場しつつある状況の中で早急に整備されるべき課題を考えてみたい.主に我々のデータベース(1998年1月から2006年12月まで)を用いた黒川陽子論文報告2)と2007年日本脊髄障害医学会で発表された比較的多くの脊髄損傷者のリハ治療に携わっている全国9カ所の2006年1月から12月まで439名の出口調査3)を基礎として用いた.
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