第48回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/千葉 《シンポジウム》神経筋疾患の呼吸リハビリテーション―座長/花山 耕三
人工呼吸器依存状態の頸髄損傷者の呼吸管理―呼吸器合併症予防・安全性向上・QOL拡大を目指して―
土岐 明子
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1独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院リハビリテーション科
pp.397-401
発行日 2012年7月18日
Published Date 2012/7/18
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はじめに
高位頸髄損傷者は脊髄損傷レベルによって吸気筋の麻痺を生じ換気不全のため人工呼吸器を残りの人生において持続的に必要とすることがある1).現在の日本においては,そのような場合気管切開を受けさせ,カフつきカニューレを使用した低容量一回換気量による侵襲的陽圧換気療法を導入する場合がほとんどである.しかしこの方法はさまざまな合併症や生活上の問題を引き起こす2).低容量一回換気量による長期人工呼吸器管理は,十分に肺胞が拡がらず,胸郭も動かされないため,肺炎や無気肺,肺のコンプライアンスが低下するリスクが高い.また気管切開カニューレ留置により,喉頭挙上が制限され誤嚥のリスクが高まり,カニューレの刺激で気道分泌物が増える.長期間カニューレを留置することで気管皮膚瘻や狭窄,肉芽形成などのトラブルを抱えることも多い.発声困難,気管内吸引の問題,定期的なカニューレ交換の必要性,人工呼吸器の故障や蛇管はずれなどの事故への恐怖を抱えた生活を送ることになる.当事者のみならず家族や関わる医療者,福祉関係者などの負担も大きい.
このような人工呼吸器依存状態の高位頸髄損傷者が安心して健康に積極的な地域生活を送ることを目標に,気管切開を用いない高容量一回換気量による非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive intermittent positive pressure ventilation:NIV)3)を導入した.一般病院において行いやすいよう工夫した本法の具体的な導入の手順を示す4,5).
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