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はじめに
リハビリテーション(以下,リハ)科医を始めとする臨床医にとって,臨床をしながら基礎研究を進めるのは時間的制約もあり,困難な場合が多い.しかしながら,臨床場面において,基礎研究の重要性を痛感することはよくあることである.このシンポジウムでは,臨床応用を視野に入れながら,基礎研究をする面白さや醍醐味を少しでもリハを専門とする人たちに伝えることができればという考えのもと企画された.私の場合,1998年(卒後8年目)から「脳損傷モデルとその解析」という題目を立てて,動物実験を初めて開始した.現在もなお,常に時間的制約を感じながら,少しずつ進めている.今回このシンポジウムで少しでも,基礎研究をする面白さや醍醐味を感じてもらえれば幸いである.
脳卒中は常に我が国の死亡原因の上位疾患である.脳卒中の死亡率は減少しているものの有病率は低下していない.脳卒中患者は,治療の進歩などから脳卒中による死は免れたものの,軽度から重度の障害を抱えている患者数はむしろ増加していると考えられる.リハ科医も数多く,日常診療で脳卒中患者を多く診察診療していることは言うまでもない.脳卒中患者の最大の願いは,脳卒中によって生じた麻痺の回復である.しかしながら,急性期からリハが推奨されているが,麻痺の回復にはどのような訓練が良いのか詳細は明らかではない.つまりは,脳卒中の運動障害のリハのevidence-based medicine(EBM)は出しにくいという現状がある.患者の年齢の違い,基礎疾患の有無,損傷部位の違いなどにより回復のスピードの違うのは当然であるため,脳卒中のリハは,その人その人の症状・障害を見ながらのオーダーメイドであり画一的でないからである.よって,脳血管障害者に対する適切なリハを実施するためには,ある程度均一な脳血管障害により生じた麻痺の回復機序を知ることである.以上のことから,リハ評価に適した実験動物での基礎検討が必要であると考えた.
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