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特集 リハビリテーションにおける動作解析
脊髄損傷患者の装具歩行の解析
Analysis of orthotic gait of people with spinal cord injuries.
香川 高弘
1
Takahiro Kagawa
1
1名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻
1Department of Mechanical Science and Engineering, Graduate School of Engineering, Nagoya University
キーワード:
対麻痺
,
歩行装具
,
歩行分析
Keyword:
対麻痺
,
歩行装具
,
歩行分析
pp.965-970
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102585
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はじめに
対麻痺者の移動手段として車いすが使用されるが,日常生活の多くの時間を座位で過ごすことで骨粗鬆症や関節の拘縮などの筋骨格機能の低下が生じる1).装具を用いた立位・歩行訓練はこれらの問題を改善するだけでなく,周囲と同じ視線で会話できるなどの心理的なメリットもある.装具歩行は,車いすに比べてエネルギー消費が高く移動速度が低いために実用的な移動手段ではないが,装具と電動モータや機能的電気刺激を併用して歩行効率を改善するシステムの開発が国内外で進められている2,3).将来的に実用化が期待される脊髄再生医療による下肢機能の再建に向けて,歩行装具や歩行補助システムを用いたリハビリテーションの重要性が指摘されている4).
これまでにさまざまな装具が開発されているが,いずれも歩行速度が遅いうえに身体負荷が高いため長時間・長距離の歩行が困難である.身体負荷や歩行効率を定量的に評価する方法として,呼気ガス分析や心拍数に基づく方法などが使われる.しかし,これらの分析だけでは装具の設計と歩行効率の因果関係がブラックボックスであるため,装具をどう改良すれば身体負荷が軽減されるかを見通すことは容易ではない.歩行の動作解析は,装具の改良による動作パターンの変化を定量的に評価することができる.その動作の違いが歩行効率に与える影響を力学的に分析・考察することによって,合理的な設計・改良の指針が立てられる.本稿では,最初に対麻痺者用の歩行装具とその歩行パターンについて説明する.次に,装具の機能性を定量的に評価するための方法について紹介する.最後に対麻痺者の歩行再建に向けた動作分析技術の展望について述べる.
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