第44回日本リハビリテーション医学会 学術集会/神戸 《シンポジウム》再生・リハビリテーション工学:ロボット・リハビリテーション工学―座長/阿部 和夫・森本 茂
神経疾患の運動解析と大脳の可塑性のモデルとシミュレーション
淺井 義之
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1独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
pp.22-28
発行日 2008年1月18日
Published Date 2008/1/18
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はじめに
ロボット技術に代表される工学技術をリハビリテーション(以下,リハ)医学へ応用するアプローチとして大きく2つ考えられる.1つは,身体外部から補助を行うアプローチであり,インテリジェント外骨格に代表されるハードウェア開発である.もう1つは身体内部から補助を図るアプローチで,神経刺激などソフトウェア的なアプローチである.本稿では後者の立場から神経系のダイナミクスに焦点をあて取り組んでいる我々の研究成果を中心に紹介する.
我々の研究の目的は,正常に機能しない既存の神経系に適切な介入を行い,正常に近い状態で機能するように回復させることである.研究のフレームワークを図1に示す.まず,制御対象である神経系を知る必要がある.解剖学的知見ももちろん重要であるが,我々のアプローチでは神経系をダイナミカルシステム,つまり非線形力学系として観察し,そのダイナミクスの特性を理解しようと試みる.次にそのダイナミクスを何らかの方法,例えば電気刺激,によって制御することを試みる.神経系のダイナミクスが制御され一時的に変化することで,シナプス学習が生じネットワーク構造の変化を引き起こすと考えられる.ここで,ある程度のシナプスの可塑性が存在することを仮定している.そして構造の変化はダイナミクスの変化をもたらす.この循環により,神経系の機能(≒ダイナミクス)を健常に近づける.以降では,このフレームワークの一部,特に神経系のダイナミクスを理解する,という位置づけにおいて,神経疾患の1つであるパーキンソン病に焦点をあてながら,運動制御系の中の脊髄神経系と高次中枢に関する研究成果を概説する.
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