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はじめに
神経因性膀胱による頻尿や尿失禁は,患者及び家族の生活の質(QOL)に重大な影響を及ぼす.また,排泄の自立が在宅復帰の鍵になることも多く,神経因性膀胱はリハビリテーション(以下,リハ)医療の現場において極めて重要な問題であり,排尿障害に関する研究はリハ医学領域において取り組むべき重要な研究領域であると考えられる.
排尿機能の基礎研究の領域では,近年,尿路上皮が,単なる防御機能のみでなく,機械的刺激に対するセンサー機能と神経伝達物質の分泌機能を有し,上皮下に存在する膀胱の求心性知覚神経終末の活性化に重要な役割を持つことや,知覚神経終末にはムスカリン受容体やATP受容体などさまざまな神経伝達物質受容体が存在すること1),さらに正常の膀胱からの知覚求心路としては有髄Ad線維が主に関わっているが,脊髄損傷後には,排尿反射経路の再構築が起こり,無髄C線維が膀胱からの知覚求心路として主要な役割を持つようになること2)などが明らかにされ,尿路上皮や膀胱からの知覚求心路をターゲットとする新規の治療法が注目されている.その中で,カプサイシンやレジニフェラトキシンは,C線維終末に存在する温度感受性イオンチャネルtemperature-sensitive transient receptor potential(TRP)channelの1つであるTRPV1を刺激した後,脱感作することによりC線維の活動を抑制する作用を持つことが見出され,その膀胱内注入療法が,脊髄損傷患者の排尿筋過活動の抑制に有効であることが臨床的にも明らかにされている3).
我々は,これまで神経因性膀胱の病態の解明と新しい治療法の開発を目的として,排尿筋収縮に対するセロトニン4)やエンドセリン受容体5)の機能を明らかにすると共に,脊髄損傷ラットを用いた排尿障害の基礎研究を行ってきた.ここでは,脊髄損傷ラットの排尿機能の基礎データを提示するとともに,TRPV1と同じTRPイオンチャネルファミリーの1つのTRPM8の活性薬であるメントールの,正常ラットと脊髄損傷ラットにおける排尿反射と摘出排尿筋収縮への影響に関する研究成果を報告する.
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