- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
現在わが国では,少子化・高齢社会の進行の中,医療費適正化という旗印の下で医療構造改革が進められ,その大きな柱として生活習慣病対策(予防の重視)と医療提供体制の見直し(診療報酬改定による医療機能の分担化や連携パスの新設による連携強化,療養型病床の削減や在宅療養支援診療所の新設による在宅療養への誘導など)が行われ,大きな変革が起こってきている.即ち,急性期から回復期を経て在宅療養への切れ目のない医療の流れを作り,患者が早く自宅に戻れるような体制の構築が求められてきている1).
このような流れの中で,急性期病院側では,平均在院日数の短縮や外来機能の抑制が求められ,一方,連携するリハビリテーション(以下,リハ)病院側でも,発症早期の患者の受け入れ,在宅医療・地域リハへの円滑な移行が必要となり,急性期-回復期リハ病院間の単なる医療連携だけでは不十分で,介護保険を主体とした維持期リハ(通所リハ,訪問リハ,入所リハ等)へのスムーズな移行,かかりつけ医や維持期病院・施設との両方向への連携強化が必須となってきている2).
急性期リハから回復期リハ,在宅・維持期リハへのスムーズな流れを構築して行くために,2006年大腿骨頸部骨折に対して地域連携クリティカルパスによる医療機関の連携体制の評価(「地域連携診療計画管理料」と「地域連携診療計画退院時指導料」が新設)がなされ,さらに,2008年4月の診療報酬改定で脳卒中へも拡充された.また,2008年4月より都道府県医療費適正化計画(地域医療計画の策定)が開始され,都道府県は,医療計画に4疾病(がん対策,脳卒中対策,急性心筋梗塞対策,糖尿病対策)および5事業(救急医療,災害時医療,へき地医療,周産期医療,小児医療)の医療体制を策定(数値目標設定,医療連携体制,医療機能等の情報開示,これまでの二次医療権にこだわらない医療圏の設定など)していくことが求められ,その体制整備が全国各地で急ピッチで進められている.
このような大きな制度改革の中で,新しい役割分担を踏まえた急性期~回復期~維持期のリハのスムーズな連携体制作りやリハプログラム構築が急務である.しかし,地域連携のあり方は,地域の人口(密度)や医療・福祉資源,リハ資源などの特性により当然異なってくる.急性期治療を受けながらその後の生活をイメージし,それに向かってリハを受け地域に帰って行くというのは理想である.しかし,現実では機能分化にとらわれるあまり,如何に早く次の医療機関に送れるか,如何に多くの行き先を用意するかに目をうばわれがちである.必要な時期に適切な医療・リハを受け,地域の中で安心して暮らしていくことを目指すには,これまでの地域医療体制では医療と介護,一般医療とリハの連携,介護保険での各サービスや専門職間の連携が不足していたのも事実であり,新たな体制作りを進めていく必要がある.
Copyright © 2009, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.