第45回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/横浜 《シンポジウム》「運動療法」から「生活活動」へ-「動く」ことの医学的効果とエビデンス-―座長/太田 壽城・間嶋 満
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する運動,身体活動の効果―ADL,上肢運動の観点から―
里宇 明元
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1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
pp.227-232
発行日 2009年4月18日
Published Date 2009/4/18
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はじめに
わが国における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者数は500万人以上と推計され1),近い将来,リハビリテーション(以下,リハ)の主要な対象疾患になると予想されている.COPDにおける活動性の低下は,本来の呼吸困難に伴う労作制限に加え,動かないことによって起こる廃用性変化によりもたらされる.近年の主なガイドラインでは,多くのエビデンスをもとに,このような活動性の低下を最小限にとどめ,患者のquality of life(QOL)を高めるための有効な治療手段として,包括的呼吸リハが強く推奨されている(表)2~5).
包括的呼吸リハとは,チームで行われる集学的医療であり,教育,気道洗浄,呼吸法訓練,呼吸筋訓練,酸素療法,心理社会的支持,運動療法,栄養管理などから構成されるが,その核となるのは運動療法である5).運動療法の効果については広く認められているものの,報告の多くは,下肢運動の効果を運動耐容能および健康関連QOLを帰結として検証したものであり,シンポジウムのテーマである「生活活動」の観点から重要な日常生活活動(activities of daily living:ADL)そのものやADL遂行に不可欠な上肢運動を扱った研究は少ない.生活労作時に呼吸困難があると,活動性低下→廃用増悪→呼吸困難増強という悪循環が形成され,一層の活動性の低下がもたらされるため,ADLの適切な評価と指導は重要な課題である.以下,COPD患者の生活機能のさらなる向上の鍵となるADLに焦点をあて,1)どのように評価するか,2)ADL障害のメカニズムは,3)効果的なADLの指導・訓練方法は,の3つの観点から考えてみたい.
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