特集 今日の呼吸器診療と今後の展望
Overview:呼吸器のcommon disease
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
室 繁郎
1
1奈良県立医科大学呼吸器内科講座
キーワード:
息切れ
,
肺気腫
,
慢性気管支炎
,
増悪
Keyword:
息切れ
,
肺気腫
,
慢性気管支炎
,
増悪
pp.1389-1394
発行日 2019年7月1日
Published Date 2019/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika124_1389
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Summary
▪COPDは主に長期の喫煙によって発症する.肺気腫病変と気道病変が主要な病理学的変化である.呼気の気流閉塞が病態の特徴であり,疾患の定義にもなっている.
▪病理学的変化・生理学的変化の結果,労作時の息切れが主な症状となる.気道病変により,咳嗽や喀痰を訴えることも多い.
▪慢性気管支炎は,喫煙を中心とする障害性粒子・ガスを長期間吸入することにより,喀痰が多くなっている状態と理解する.ただし,呼吸機能上,閉塞性障害がなければCOPDではない.
▪慢性気管支炎は気道過分泌症状(喀痰が多い状態)が古典的な定義であるが,気管支喘息,咳喘息,気管支拡張症,後鼻漏を含む副鼻腔気管支症候群,びまん性汎細気管支炎などとの混同・誤解・境界が問題となる疾患概念である.
▪かつては,喫煙による気道炎症が病態理解に必須と考えられていたが,発育障害などが注目されるようになり,疾患定義から気道炎症は必須ではなくなっている.しかし,発育障害の原因として,両親の喫煙は重要な危険因子であることも判明している.
▪禁煙が必須である.薬物治療の中心はLAMA,LABAを中心とする長時間作用型気管支拡張薬の単剤あるいは併用(配合薬を含む)である.症状に応じて,SABAあるいはSAMAを追加投与することも症状軽減,運動耐容能向上に有効である.
▪治療の目標は,息切れを中心とする症状改善と,増悪予防である.日常的な管理目標として,身体活動性の維持向上が注目されている.
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