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はじめに
近年,高齢化社会を迎えて,心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患は極めて大きな問題となっている.わが国における心疾患患者による死亡率は,2005年度の調査で,人口10万人当たり123.4,脳卒中は,87.2である.これは,悪性腫瘍に次ぐ,2位,3位を占め,両者を合わせた虚血性疾患による死亡率は,悪性新生物の223.5に匹敵する1).
最近,成人の末梢血から血管内皮前駆細胞(endotherial progenitor cell:EPC)が発見されたり,血管新生因子と呼ばれるたんぱく質の,血管新生における分子機構が徐々に判明してきている2).そのため,虚血性疾患に対する遺伝子導入や,細胞移植を用いた血管新生療法に注目が集まっているが,いまだ標準化された治療法は確立されていない.
その一方で,古くからリハビリテーション(以下,リハ)分野で治療手段として用いられてきた電気刺激が,血管増加(血管新生)・血流増加効果3)をもつことが判明してきた.すなわち,この事実は,電気刺激を用いた血管新生療法の可能性を示唆する.
また高齢化社会のもうひとつの問題として,廃用症候群の存在が大きくなっている.廃用症候群とは,疾患の長期化などにより,心身の活動性が低下し,骨格筋の持つ運動能そのものを低下させる状態を意味する.そのために本来可能な在宅生活や,QOLの向上が困難となる4).背景として,医学の進歩や寿命の延長などの理由から,疾患が長期化・慢性化していることも大きい.廃用症候群の予防や治療には,筋力増強や運動耐容能の向上が課題とされている.電気刺激に筋力増強効果があることは以前から言われてきたが,十分に普及しているとはいえない.その理由と対策について検討することが必要であると思われる5).
そこで,今回われわれは,電気刺激による血管新生療法や筋力増強,運動耐容能の向上の可能性について言及することとする.
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