特集 心疾患に対する理学療法の新たな展開
心疾患の骨格筋と電気刺激療法
小澤 哲也
1
,
齊藤 正和
1
,
高橋 哲也
2
Tetsuya Ozawa
1
1公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院理学療法科
2東京工科大学医療保健学部
pp.803-810
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102399
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はじめに
心疾患患者に対する有酸素運動やレジスタンストレーニングの有用性は多数報告されている1,2).しかしながら,血行動態が不安定で,息切れなどの自覚症状が強く出現する患者に対しては,これらの運動が実施困難な場合が多い.そのため,血行動態の変動や自覚症状を抑えながら骨格筋に対して刺激を与えることができる電気刺激療法(electrical muscle stimulation:EMS)が最近注目されている.
EMSに関する先行研究は,病態や治療内容が一定期間安定している慢性心不全(chronic heart failure:CHF)患者に対する報告が多く,無作為化比較試験やメタアナリシスも報告されている3~9).一方,病態や治療内容が安定しない急性期の心疾患患者に対するEMSの効果を検討した報告は少ない10).近年,敗血症や多発外傷などにより集中治療室(intensive care unit:ICU)での治療(クリティカルケア)が必要とされる患者に対するEMSの効果が報告されていることからも11~16),今後は急性期の心疾患患者への応用が期待される.
本稿では,心疾患の骨格筋異常,CHF患者に対するEMSの効果と敗血症や外傷患者に対するクリティカルケア領域でのEMSの報告を概説した上で,心疾患に対するEMSの適応と臨床応用について紹介する.
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