Japanese
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特集 シナプスの形成と動態
大脳切片でのシナプス可塑性の研究
Synaptic plasticity studied in slice preparations of neocortex
小松 由紀夫
1
Yukio Komatsu
1
1京都府立医科大学第二生理学教室
pp.196-203
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900035
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大脳皮質の可塑性は発達期の視覚野においてもっとも詳しく研究されている。成熟動物の大脳皮質視覚野細胞は視覚入力に対して選択的に反応する。たとえば,直線の傾き(方位)や両眼視差に対する反応である。しかし,この反応選択性は,生まれたばかりの動物の細胞にはほとんどなく,その後の数カ月でほとんどすべての細胞に見られるようになる(Blakemore and Van Sluyters,1975;Buisseret and Imbert,1976)。この反応選択性が急速に発達する時期(感受性期)に視覚環境を人工的に制限すると,大多数の視覚野細胞がその期間に体験した視覚入力に選択的に反応するようになる(Blakemore and Cooper,1970;Hirsch and Spinelli,1970;Wiesel and Hubel,1965)。たとえば,縦の縞模様だけが見えるケージの中でネコを育てると,ほとんどすべての視覚野細胞が縦の方位選択性を持つようになる。また,片眼を縫合すると,その目に対する反応はほとんどなくなり,大多数の細胞は開いていた方の目に対してのみ反応するようになる。
視覚野細胞の反応性の解析から,視覚体験が視覚反応に与える影響や可塑性の持つ機能的意義については多くの知見が得られてきた。
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