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編集後記
藤田 郁代
pp.71
発行日 2020年3月15日
Published Date 2020/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001200270
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今年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが,わが国における夏季オリンピックの開催は本大会で2度目となります.第1回大会は戦後からの復興を果たした1964年に東京で開催されました.この年は,わが国の言語聴覚分野の歴史においても記念碑的な年になります.というのは,この年の秋に笹沼澄子先生によってわが国最初の失語症の言語臨床が開始されたのです.笹沼澄子先生によると,そのいきさつは次のようなものであったということです.当時,東京大学物療内科教授であった大島義雄先生がNew York大学Rusk InstituteからMartha Taylor博士を招き,5日間の失語症講習会を開催されました.このとき,Taylor博士は物療内科の関連病院である長野県の厚生連鹿教湯温泉療養所に赴き失語症患者に面接されました.笹沼澄子先生はその助手としてTaylor博士に同行され,それが縁となってこの年の秋に同病院で失語症の言語治療部門を開設されたということです.
それから50年以上が経過し,言語聴覚療法を提供する場は大きく拡大してきましたが,問題は量だけでなく質の充実です.どのような時代にあっても,言語聴覚障害者のニーズに応えるには臨床研究の積み重ねが重要です.本誌は,このような研究の成果を発表する場であり,特に基礎的研究に裏打ちされた評価法や治療法の開発,言語聴覚療法の効果の検証,時代の要請に応える専門的サービスの創出に関する研究は本誌ならではのものと思います.
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