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樹木の緑が深くなるこの候は,日本言語聴覚学会が開催される時期でもあります.本年も言語聴覚研究の歩みを一歩前に進める演題が多数発表されることと思います.
本誌は,言語聴覚障害の基礎と臨床に関する学術専門誌であり,健常な言語・認知・コミュニケーションの発達と加齢変化,各種の言語聴覚障害,認知機能障害や摂食嚥下障害の原因,病態,評価・診断,治療,QOLと参加,AAC,言語聴覚士教育など幅広い領域を対象としています.今号には,アルツハイマー病の言語機能に関する研究と,低出生体重児の注意機能に関する研究が掲載されていますが,いずれも研究があまり進んでいない領域の重要テーマを取り上げており,新規性が高い知見が得られています.また,リッカム・プログラムによる吃音治療に関する症例報告は臨床への有用な示唆を与えてくれるものと思います.今号は「現場,最前線」が充実しており,震災地,摂食嚥下臨床,国際学会の現場から3篇の報告がなされました.東日本大震災の復興地区における言語聴覚士の訪問リハビリテーションは貴重な実践報告であり,今後,本分野に「災害言語聴覚療法」を構築していくうえで重要な資料になるものと思います.また,加齢による筋量および筋機能の低下を呈するサルコペニア患者に対する栄養面での介入報告は,高齢社会における言語聴覚療法の方向性の一角を示しています.Asia Pacific Conference of Speech,Language and Hearingはアジアと環太平洋の国々の言語聴覚士が集う国際学会であり,第10回大会は来年9月にわが国で,城間将江教授(国際医療福祉大学)を学会長として開催されることになっています.
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