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1.はじめに
1999年の第1回国家試験で,約4,000人の言語聴覚士(ST)が誕生してから14年経ち,ようやく有資格者が2万人を超えた.しかしながら,概算で650万人ともいわれる言語聴覚障害児・者に必要な言語聴覚療法が十分に届いているとはいえない現状がある.
2013年,第14回日本言語聴覚学会のメインシンポジウムのテーマの1つとして「言語聴覚士の開業」が取り上げられた.まだ少数であるが,多様化する社会の要請に応え,個人事業主となって起業する言語聴覚士が誕生し,社会の流れも地域に根ざした言語聴覚療法が求められる時代になっている.しかし,開業に関心はあるが,「どのように進めていったらよいかわからない」「はじめの一歩が踏み出せない」という声も耳にする.
今回のシンポジウムでは,すでに様々な形で開業している言語聴覚士に,開業のきっかけや実務,実情などを発表してもらい,今後の言語聴覚領域での展開や方向性を探るディスカッションを行った.
シンポジストは,小児から高齢者の地域リハビリテーション,そして養成校教員を経て開業した與儀賢也氏,「先駆者として考えたうえで行動することが大切」と言語聴覚士の起業の可能性を述べる藤井達也氏,「住み慣れた家と環境での在宅生活の維持」を目標に他職種と共同で会社を興した見目隼人氏の3人で,それぞれのメッセージの中に言語聴覚療法の大事な要素がちりばめられていた.
「開業」という何もないところに道を開いていく過程は,言語聴覚士の国家資格が成立する前から言語聴覚障害に携わってきた人々の通ってきた道と類似するものがある.自ら考え抜いて決断し行動することが求められるパイオニアならではの苦労と喜びがある.
少子高齢社会の中で,言語聴覚士に求められるものは何かを考えながら,「開業」をキーワードにいろいろな角度から,言語聴覚士の役割や言語聴覚療法の可能性について考えてみたい.
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