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1.はじめに
言語聴覚士とは,言語機能および聴覚機能の異常によるコミュニケーション障害に対して,その機能を回復させるためのリハビリテーション,あるいは小児においては機能の発達を促すハビリテーションを担う職種であり,1998年に施行された言語聴覚士法により国家資格として誕生した.もちろんそれ以前からそうした職種は必要とされていたわけで,言語治療士と呼ばれていた専門職がすでに活躍しており,彼らのほとんどが新たに国家試験を受け言語聴覚士に移行した.また,国家資格として認められてからは言語聴覚士を養成する大学の専攻コース,専門学校などが新たに誕生し,そこで教育を受けた人たちも続々と資格を取得しつつある.しかしながら2002年現在で言語聴覚士の数は6,740人であり,言語聴覚療法の対象となる患者数約105万人に対して,その数はまだまだ不足しているといわれている1).
コミュニケーション障害に対する訓練,指導を行うためには,まず言語および聴覚機能の検査,評価を行う必要があり,聴力検査はその一部に含まれる.しかし言語聴覚士法が施行される以前では,言語治療士は主として小児の主観的聴力検査(遊戯聴力検査,行動観察による聴力検査など)を行うにとどまり,成人に対しての一般的な聴覚機能検査を行うことは少なかったと思われる.ところが,“言語聴覚士”と,その名称の中に“聴覚”の用語が入ったことからもうかがわれるように,今後は言語聴覚士の主要業務の1つとして聴覚機能検査全体が含まれてくる可能性がある.
本稿では,言語聴覚士が法制上どのような職種で,どのような業務を行うのか,その養成のための教育,国家試験の内容はどんなものなのか,について簡単に紹介し,最後に北里大学医療衛生学部の臨床検査技師コースと言語聴覚士コースとのカリキュラムの違いを述べて,おのおのの特徴を比較することにする.
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