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気がつけば作業療法士の資格を取得し20年目の節目を迎えている。これまで多くを学ばせてくれた担当患者様,ご指導いただいた諸先輩方,共に時間を過ごした同僚・後輩,さまざまな関係機関・多くの職種の方々に心から感謝を申し上げたい。
日本リハビリテーション病院・施設協会が提唱する地域リハビリテーションの定義が2016年に改定され,地域リハの対象者が子どもから成人・高齢者と広げられました。また,「その人らしく」という用語も追加されています。現在私は介護保険領域の方々と接する機会が多くありますが,日々臨床で地域の健康な高齢者,要支援者,要介護者とかかわる中で,この「その人らしさ」に着目し「その人らしさ」とは何なのか,自問自答しながら,試行錯誤を重ね活動しています。対象者のその人らしさを知るために,現在実施していることはその人が生きてきた生活史を知ること,それが「その人らしさ」を語るうえで何かのヒントになると信じて,生活史について耳を傾け,自分史を作成するという作業を地道に継続しています。自分らしく生きるとは聞こえの良い言葉ですが,皆さんは「あなたらしさ,もしくは自分らしさ」と聞かれて答えを持っているでしょうか? 私自身,「自分らしさ」として,すぐに回答できる明確なものはありません。私の家族が「夫らしさ,お父さんらしさ」と聞かれた時に,何を答えるのだろうかという疑問が湧いてくるのも正直な心情です。その人らしさ・自分らしさは誰が表現するものなのでしょうか。この答えが見つかるかはわかりませんが,「その人らしさ」を安易に用いることなく,この課題と向き合い続けていきたいと思っています。一人ひとりが自分らしく生きるとはどういうことか,最期が現実的に迫った時にどのように生きぬくのか,切羽詰った状況に陥る前から考え,自分自身の意思を表現しておくことがとても大切だと考えています。
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