保健婦の眼
雪だるまに想う
淡島 みどり
pp.37
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200684
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雪国の友達からのたよりでは,このクラスメートは大きくなつた子供たちを相手に,毎日スキーのお相手や大小さまざまの雪だるまをこしらえることに忙しく今までの主婦の生活の単調さからようやく解放されてきて,生活にも張りが出てきたと書いてある。夫と子供の世話に朝から晩まで追いまくられる.一種の自己喪失のれんぞくというような主婦の生活の,ある瞬間には「自分の人生はこれでよいのだろうか」とたまらなく心細くおもい,独りで職業をもつて仂いている友人たちがとても羨しくおもわれるものであるらしい.或る有名な評論家はこうした女性の立場をおもんばかつて,家庭に入つてからの女のたのしみということについて,例えば学校において「娯樂科」というような科目を人れるようにしたらどうかと提言していたが,全く一考されてもよいことだと思つた.
雪だるまを中心にしてとられたこの家族の写眞はとてもほほえましく,彼女も主婦としての安定した心境を開拓し得たためか,以前より一そう美しく幸福そうにみられるのは,前より嬉しいことである.坊やの正ちやん帽子をかぶつて得意げな雪だるま君--スノーマンをみるにつけても,この家族やスノーマンのためにそばで焚火をたく愚をつつしんでもらいたいと切におもうのである.
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