巻頭言
サンゴの海の中で知った高齢者福祉の真髄
黒木 勝紀
1,2
1医療法人大誠会グループ介護統括部
2特別養護老人ホームくやはら
pp.320-321
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200849
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「クゥ〜〜〜,コォ〜〜,クゥ〜〜〜,コォ〜〜(ポコポコ)」海の中で空気を吸って吐く音だけが響きわたり,時折「ワァ〜〜!」と喜んでいる声がレギュレーターを通して水の中を伝わり聞こえてくる。2001年に開催された全国バリアフリーダイビング協会主催の第4回全国大会で海中ボランティアでサポートした時の一場面だ。この大会は,今年で21回目を数えている。健常者の私たちだけでなく,身体の不自由な方や加齢者の方にも同じようにエメラルドグリーンの海,白い砂浜,水中にシャワーのように降り注ぐ太陽,色とりどりのサンゴ礁など大自然を感じ,何よりも,そこで呼吸している自分自身,そして,ダイビング後の爽快感,人と人とのふれ合いを通して生きがいある人生を過ごしていただきたい! という協会の強い思いから誕生した歴史ある大会だ。
当時,スキューバダイビングのインストラクターをしていた私は,ダイビングに興味はあるが一人で行くには不安のある65歳の貴婦人から懇願され,この全国大会に同行することになった。全国各地から集まった参加者は45名,89歳のおばあちゃんから,全盲の方,四肢麻痺の方などさまざまであった。不安気だった参加者の皆さんがプール講習を経て,海に出ていくのだが,海中での感嘆の声,無重力状態で私たちと一緒に泳ぐ様子,そして海から上がった後の安堵感とともにはちきれんばかりの笑顔は,海に潜ることなんてもうできないと諦めかけていた夢を実現できた満足感に満ちあふれ,その表情はキラキラと輝いていた。
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