Book Review
頸損晩夏―創りつづけた頸髄損傷35年の生活の記録
畠中 規
1
1横浜市総合リハビリテーションセンター研究開発課
pp.294
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200841
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あなたは病気やけがで頸髄損傷を受傷したら,次の日からどのように生活していきますか。あるいはあなたが医療・福祉関係者だったらその方をどのように支援していきますか。本書は交通事故により高位頸髄を損傷した上村数洋氏が,家族と共に歩んできた生活の記録であり,同様の障害をもつ方々に生きる希望を届け,同時に支援者の方々に,福祉用具と,障害者に必要な細やかな医療ケアに関する生のニーズを発信しています。
前作『明日を創る—頸髄損傷者の生活の記録』(三輪書店,1990)から通して読み,現在と比較してみると,受傷から35年で,国内メーカーの製品開発,介護保険制度の導入による福祉用具のレンタルが始まり,訪問看護ステーションやヘルパー派遣などの人的支援も少しずつ選択肢が広がってきました。しかし,人手もサービスの質もまだ十分ではなく,用具の面でも種類や細かいカスタマイズの点で十分ではありません。本書の先駆者たちは,ユーザーの声から出発したモノづくりと多職種チームによりさまざまな目から吟味することを20年以上前から実践してきました。しかも,現在のインターネット社会と違って,人づてに専門家を探し,電話や訪問で自分に必要な機器やサービスを探して,もしなければそれらを提供してくれる枠組みを自分たちで作ってきました。上村氏は4章にあるように,当時の県知事とパイプを持ち,行政や私たち支援者との関係づくりをしながら,必要なことを粘り強く説明し,説得し,社会制度や支援方法を障害者自身のニーズに合わせて変えていく努力をしてこられました。このことを伝え続けてほしいと思います。
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