書評
上村数洋 著―明日を創る―頸髄損傷者の生活の記録
古賀 唯夫
1
1九州芸術工科大学芸術工学部
pp.938
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106393
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本書は一人の頸髄損傷者の日常生活におけるさまざまな問題と,その解決の記録として書かれているが,単なる一個人の体験記録以上に,多くの頸髄損傷者,リハビリテーションメディカル,パラメディカル・スタッフ,ケースワーカー,リハビリテーションエンジニア,建築家,工業デザイナー,リハビリテーション機器メーカーにとって大いに参考となる有益な書である.
本書の構成は4章から成り,1章では,受傷から障害の受容に至るまでの自分自身の内での葛藤について述べられている.健康な人間は障害を持つ人に対して,「障害の受容」を簡単にいうが,障害を持つ人にとってはそれほど簡単なことではなく,障害者を取り巻くまわりの入々,家族の励ましや理解,医師,PT,OT,看護婦らの障害者への接し方や励ましなどによって障害が受容されていくことを示唆している.2章では,生理・衛生と日常生活に関して,その管理や著者の工夫と,障害を克服して如何に明るく生きるか,その努力について述べられ,3章の身体機能の代わりとなる日常生活機器(ベッド・移動機器・マイクロエレクトロニクス機器<ME機器>・自助具・住宅など)の生活の中からの評価は,これらの機器の開発・設計に携わるエンジニア,デザイナーやメーカーにとってチェックリストともなる生きた資料といえる.4章では,利用可能な福祉制度と利用する際の障害者自身の態度等について簡潔にまとめられている.
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