特集 高齢者のフレイル(虚弱)と生活機能低下
高齢者の口腔機能の低下とフレイル
渡邊 裕
1
1地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
pp.187-192
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200815
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はじめに
自然な老化は,その人の身体や心理,取り巻く生活および社会の環境に合わせて,身体機能のみならず,精神心理,社会的機能が調和しながら徐々に変化していくもので,そのような自然な老化の中で人は,周囲との不調和を感じることは少ないと考える。高齢になるほど,身体的,精神心理的,社会的な問題から地域のコミュニティとのつながりが少なくなる中,日本では平均寿命は大幅に延伸し,一人暮らしの高齢者や老夫婦世帯が増加してきている。地域の交通,通信,医療福祉の基盤は整備されてきているが,高齢者はその急速な変化についていくことができず,周囲との不調和を感じるようになってきているように思われる。近年,注目されているフレイルは,老化によって生じるささいな問題が相互に影響しあってさまざまな負の連鎖が生じ,悪循環を加速させ,要介護状態,在宅療養の困難,死亡といった不幸な転帰に陥りやすい状態と考えられている(図1)。つまり見た目では問題ないように見えても,軽度な侵襲やストレスに暴露されると,ストレスが除かれ時間が経っても,元の状態に戻ることができないばかりか,身体,精神・心理,社会的な軽微な問題が相互に影響しあって,日常生活に大きな不具合が生じるような状態といえる。このようなフレイルに関連するさまざまな危険な老化の中に,滑舌の低下,食べこぼし,わずかなむせ,噛めない食品が増える,口の乾燥など,ささいな口腔機能の低下であるオーラルフレイルがあると考えられている。
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