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平成10年度に始まった地域リハ支援体制整備推進事業の岡山県での活動については,平成16年度から川崎医科大学附属病院が岡山県支援センターを務めてまいりました。この事業では9つの保健圏域に広域支援センターを設置し,「地域ぐるみのリハ・システムづくり」を念頭において,各地域における医療施設と介護関連福祉施設,保健所,公的機関の連携促進に力を注ぎました。福祉施設から医療施設へは声をかけにくい風潮にあった時代に,医療施設側から福祉施設へと誘いをかける方針を採択し,そのことは介護連携の促進には非常に効果的となりました。平成18年度からは岡山県地域リハ推進事業と名称が変更され,数多くのワーキンググループを設立して活動を広げました。しかし,県支援センター委員長であった私の力不足によって,岡山県による事業への経費の打ち切りが決定され,平成20年度で終止符を打たざるを得なくなりました。本事業が失敗した最大の原因は,「地域リハ」という用語を地域住民に周知させることができなかった点にあると考えています。ただし,わが国の高齢化は他国に類を見ない速さで進行しているため,地域リハ事業に代わり得る方策を打ち出すことは必至の状況でした。
そのような時に,厚生労働省から新たな施策として,「地域包括ケアシステム」の構築が提案されました。ご存じのように,団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度の要介護状態となっても住みやすい地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される街づくりを目指す計画が出されました。岡山県においても,地域包括ケア体制推進総合事業や岡山地域医療構想・包括ケアシステム研究会,岡山県在宅医療推進協議会,岡山県地域リハリーダー育成・広域派遣事業をはじめとするさまざまな事業や,市町村で取り組まれている事例の紹介など,活発な取り組みがなされるようになりました。しかし,これらの事業はトップダウン型の戦略であり,各事業所の代表者に及ぼす影響力は強いものの,実際に医療福祉の現場で働いている介護支援専門員や介護職員,訪問看護師,リハ関連専門職などのすべてに情報が行き渡るには相当な時間が必要となるものと予測されます。
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