連載 感性の輝き・第36回
意義のある生活・生きていく価値を探そう
祝部 昭子
1
1介護老人保健施設寿生苑
pp.413
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200398
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30年前,まだ私が学生で実習に励んでいた時のこと。ある実習指導者が「Occupational Therapy(作業療法)っていったい何だ?」と突然難解な質問を投げかけてきた。“心身に障害がある人に対し,作業活動を用いて諸機能の回復・維持を行う……”作業療法の定義が頭の中を駆け巡り,背中は冷や汗でびっしょりであった。「実はOTを作業療法と直訳したためにわかりにくくなってしまったが,本来は障害を持ちながらもいかにしてうまく生活をしていけるか,それを支援するのがOTであり『生活技能療法』と言ったほうがふさわしいと思う」切々と自論を展開された。当時の私にとってこの言葉は鮮烈な印象を受け,その後の私にとってのOTの基本姿勢となった。
近年では日本作業療法士協会も生活行為向上マネジメントを手法として,より明確に生活に焦点を当てた取り組みを広めている。しかし,「生活の質の向上を目的とした取り組みを行う」とひと口に言っても千差万別で,本人が思い描く意義ある生活とはいったいどのようなものなのだろうか? とにかく歩くことができればいいのか,あるいはADLが自立したり趣味的活動ができれば幸せと感じることができるのか。どうもそれだけではないように思う。
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