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はじめに
厚生労働省(以下,厚労省)は平成25(2013)年度よりこれまでの4大疾病に,新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とした1)。中でも気分障害の患者数は,厚労省の患者調査によれば2008年には104万人と100万人を超え,平成23(2011)年度の調査でも95.8万人と依然高止まりの状態にあり,今や国民に広くかかわる疾病として重点的な対策が必要と認識されるに至っている2)。
また国立社会保障・人口問題研究所の調査では,わが国のうつ病による経済損失は,約2兆7,000億円に上り,社会経済的な損失も大きな問題となっている3)。
こうしたメンタル不調による休職者や離職者を支援するプログラムとして医療機関が行うリワークプログラム(以下,リワークプログラム)が注目されている。このプログラムは,気分障害の復職・就労継続が難しいと言われる中,復職はもちろん,復職後の就労継続においてもエビデンスを得ている4)。また復職準備性と再休職予防の客観的判断や確定診断の場としても有用なプログラムである。
さくら・ら心療内科(以下,当院)でも2008年より精神科デイケアでリワークプログラムを実践している。2007年の開院後,臨床上経験する多くの休職患者に対する復職の困難さ,気分障害に対する社会資源の乏しさが,当院「リワークデイケア」開始の契機となった。そして確定診断の場として機能していることもリワークデイケアのもう1つの重要な要素である。ある一定時間,利用者と過ごすことができるデイケアの構造は,その人の隠れた症状や特性を確認することを可能にする。短い外来診察の中では,表出されない訴えや見落としがちな些細な変化もデイケアの中では,多職種チームの視点やかかわりから多くの貴重な情報を得て,ダイレクトに治療につなげることができる。うつ病に隠れた双極性障害や適応障害のベースに隠れた発達障害などは,こうした多職種チーム支援のかかわりから発見される。このような正しい診断と正しい治療は早期の社会復帰に必要であり,医療の最も重要な役割である。また支援によって経済活動に復帰できることは,患者本人の生きがいの再獲得,再発予防につながり,社会経済的な問題に対しても有用な手段であると考える。
本稿では,地域移行への流れが加速する中,専門分化する精神科医療分野でスタンダードになりつつあるリワークプログラムに焦点を当て,当院リワークデイケアの取り組みを紹介し,今後の精神科クリニックやデイケアのあり方について考察を試みたい。
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