特集 精神医療保健福祉に求められる地域リハのあり方
これからの精神科医療機関のあり方
野口 正行
1
1岡山県精神保健福祉センター
pp.310-314
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200104
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はじめに
平成26(2014)年4月より精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律が施行され,病院は退院後の地域生活を見据えて,必要な支援を行うことが法律に明記された。また相談支援事業所や介護保険事業所が,地域援助事業者として退院後の精神障害者の地域生活をサポートする主力機関となることも明記された。
今後,専門職の人員・財源を入院から地域へのシフトが大きなトピックになる。その際に難しい課題となり得る点がある。脱施設化を日本に先行して進めてきた国々は,いずれも医療機関が基本的に公営であり,日本のように民間精神科病院中心の国が脱施設化したわけではない。民間病院の病床削減を計画的に秩序だって進めることは容易ではない。さらに日本では人口減少と高齢化という人口動態の変化にも世界に先駆けて突入する。要するに,厳しい予算の制約の中で,大変大きな制度変更を明確な手引きなしに行わなければならないわけである。官民をあげて知恵を絞らないと,医療保健福祉全崩壊という恐ろしいシナリオもあるかもしれない難しい課題である。
こうした状況の中,どのようにして地域支援の体制をつくるのか。高齢者医療を先駆けとして,医療全体は「地域包括ケア」への移行を目指すことになる。精神医療はこの体制から蚊帳の外という感じであるが,この概念は今後の精神医療にとっても非常に重要な意義を持っている。以下は,岡山県精神保健福祉センター(以下,当センター)での地域支援の経験を交えながら,精神医療の地域包括ケアの方向性について触れてみたい。
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