特集 発達障害×慢性疾患
発達障害×慢性疾患 ケースレポート
発達障害×知的障害×慢性疾患
喜瀬 守人
1,2
1医療福祉生協連 家庭医療学開発センター
2久地診療所
pp.961-965
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023080006
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プライマリ・ケアでよく遭遇する問題
どちらも発達障害に知的障害を合併した症例であるが,症例1は筆者初診時には発達障 害未診断,症例2は幼少時から知的発達の遅れがあり療育手帳も支給されている.プライ マリ・ケアで遭遇するのは圧倒的に後者のほうが多いであろう.プライマリ・ケアで知的 障害を扱う場合,以下の点が問題になりやすい. 知的発達の問題が軽度と考えられる場合,そもそも診断を受けたことがないケースがほ とんどである.新たに診断するとしても,精神科の受診や臨床心理士・言語聴覚士による 心理検査などが必要であるし,知的機能が低いことを疑っていると患者本人や家族に伝え ること自体,非常にハードルが高い.また,医療を定期的に受ける必要があるような事例 では生活に何らかの困難をきたしていることが多いが,療育手帳が支給されていなければ 制度的なサポートの対象ではないため,いわゆる制度の狭間に落ちてしまいやすい.また, 疾患の理解が十分ではなく,不安や抑うつに陥りやすいことも多いため,頻回受診になる こともしばしばみられる. 既知の知的障害がある場合は,ほとんどの事例で療育手帳が支給されており,作業所へ の通所,グループホームへの入所など,何らかの制度的サポートの対象となっている.こ の場合に問題になりやすことのひとつが,ステークホルダーとの連携である.保護者,い わゆる作業所やグループホームのスタッフ,精神科医などがそれに該当するが,多くの場 合で十分な連携が取れているとはいえず,とくに医療に関しては伝言ゲームになりやすい.
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