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はじめに
近年の学校教育における制度の変更として,まず挙げられるものは,平成19(2007)年度に学校教育法が一部改正され「特殊教育」から「特別支援教育」となったことではないだろうか1)。「養護学校」は「特別支援学校」へ,「特殊学級」は「特別支援学級」へ,これらはただ名称の変更だけではなく,その中身においても大きな変更があった。特殊教育では,障害種別の教育環境に生徒・児童を当てはめていく傾向が強かったのに対して,特別支援教育では,子ども一人ひとりに応じた支援を考えていくことが盛り込まれ,重視されている点で大きく違うものと考えられる。また,特別支援教育の対象に,知的発達に遅れはないものの発達に問題を抱える,LD(学習障害),ADHD(注意欠陥・多動性障害),高機能自閉症などの発達障害も含まれるようになったことも大きな変化である。平成19(2007)年度は,教育関係者の間で「特別支援教育元年」とも呼ばれている2)。まさにこれは学校教育における大きな転換点であるととらえることができる。
通常学級を対象とした文部科学省の調査では,学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は,推定6.5%と発表されている3)。特別支援教育を必要としている児童生徒は各クラスに1〜2人いる存在であり,もはや特別な存在ではないことを示している。このような問題に国も医療,保健,福祉などの関連分野との連携を深めていくことを謳っている。東京都は平成28(2016)年度までに都内すべての知的障害特別支援学校に外部専門家(PT,OT,STなど)を導入するとしている4)。さらに普通校での特別支援学級の開設も増えてきており,そこでもまた外部専門家のニーズが生まれている。その連携の効果や今後の課題も報告されてきている5)6)。効果としては,連携により教師の指導力の向上や専門的知識の習得などが挙げられている。同時にさまざまな課題も挙げられている。特にSTとの連携はまだ不十分であり,課題も多い7)8)。しかし,そのような中でも言語コミュニケーション発達というものは,教育の分野と非常に密接にかかわるものであり,そこを専門とするSTは,より良い連携が望まれる職種の1つである。学校教育への貢献は果たせるはずであり,求められている時であることに違いない。
しかし学校教育と一口に言っても,普通校から特別支援学校と幅広く,それぞれ重要視される知識やスキルは異なる。筆者のわずかな経験からではとてもまとめることができないので,今回は,東京都言語聴覚士会の社会局小児福祉・教育部が主催する「小さな勉強会—学校でのST支援を考える」での活動内容やそこで得られたことを紹介し,まず特別支援学校におけるSTの現状と役割について整理する。次に普通校(特別支援学級を中心に)でのSTの役割についてまとめ,最後にそれらを踏まえて,今後の課題や展望を述べることとする。
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