Japanese
English
特集 転移性脊椎腫瘍治療大全
第3章 治療の適応と手技
転移性髄内腫瘍に対する手術適応と現状
Surgical Indication and Current Status for Intramedullary Spinal Cord Tumor
岩﨑 素之
1
Motoyuki IWASAKI
1
1北海道大学大学院医学研究院脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Hokkaido University Graduate School of Medicine
キーワード:
転移性髄内腫瘍
,
intramedullary spinal cord metastatic tumor
,
腫瘍摘出
,
removal of tumor
,
日本脊髄外科学会
,
Neurospinal Society of Japan
Keyword:
転移性髄内腫瘍
,
intramedullary spinal cord metastatic tumor
,
腫瘍摘出
,
removal of tumor
,
日本脊髄外科学会
,
Neurospinal Society of Japan
pp.801-806
発行日 2024年12月25日
Published Date 2024/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002202411
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
転移性髄内腫瘍はまれである.その発生頻度は全がんの0.1〜2.1%,中枢神経系の転移の8.5%とされている3).しかし,近年はがん治療の進歩のためにがん既往のある患者での転移性髄内腫瘍の診断率は着実に上昇している1).治療介入されていない転移性髄内腫瘍の発生率は報告がきわめて少なく不明である.手術介入は脊椎転移と比較しても基準が明瞭であるとは言い難い4).Multimodalityな治療を受ける可能性が高いことも影響し,術後の予後予測因子が何であるのか,術者から術前に患者に明言することが困難である.また,転移性髄内腫瘍と診断された患者の大半はがんのterminal stageであり,生命予後,機能予後各々に対する外科治療介入のエビデンスが著しく不足している.過去の報告では手術,放射線,化学療法といった治療内容にかかわらず,症状発現からの生存期間は平均3カ月とされており,一般的にはその予後はきわめて不良である4,11).近年の分子標的治療などの進歩は今後の生命/機能予後に大きく影響すると思われるが,現在のところ症例報告が散見される程度である.
日本脊髄外科学会(NSJ)は脊髄髄内腫瘍に対し2009〜2020年の間に全国58施設で後方視的全国多施設観察研究を行い,そのサブ解析として転移性髄内腫瘍を扱った.治療介入がなされた転移性髄内腫瘍の近年の報告に限定すると,Gazzeriら3)は30例の後方視的多施設共同研究,Stricklandら9)は13例の単施設研究を行っている.NSJは全国の手術介入された29名の患者を解析し6),中期的な神経機能予後を報告した中では最大の患者数を対象としている.
Copyright © 2024, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.