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頸椎病変由来の症状と上肢末梢神経病変由来の症状は,どちら由来なのか診断に苦慮することがある.両者の鑑別は,頸部痛,肩甲間部痛などの症状を伴えば鑑別は容易であるが,ときに鑑別に苦慮する症例を経験する.また,頸椎病変と末梢神経絞扼性病変ともに存在する場合もある.われわれ脊椎外科医からみた神経症候と脳神経内科医からみた神経症候学にギャップを感じるときもある.よく経験するのは,頸椎症性頸髄症なのか筋萎縮性側索硬化症なのか,また髄内腫瘍なのか脊髄炎なのか,また頸椎症性脊髄症なのか脊髄サルコイドーシスなのか,これらの鑑別には症候学はもちろんのこと画像鑑別診断も極めていないと困難である.また,電気生理学的診断も鑑別には重要となる.
本書を編集された園生雅弘先生は脳神経内科医であり,特に神経電気生理学を専門とされているが,神経筋疾患を診断するうえで神経症候学を最も大切にされている先生である.今回の改訂版は,園生先生が本誌において企画し,そして評判のよかった「脊椎脊髄疾患診断のための神経症候学の基本」(27巻1号)と「脊椎脊髄疾患と間違えられそうになった症例・疾患」(31巻2号)の特集をベースに編集された.症例を提示し,診断するうえで重要な症候,神経所見,そして見逃してはならない画像所見,さらに必要な場合の筋電図検査所見,その重要性をとてもわかりやすく,key point説明や赤色下線を引いてクローズアップしながら解説している.読者側に立ったわかりやすい本を目指していることがよくわかる.さらに,神経症候学が高位診断や鑑別診断に重要であり,決して初めから画像診断や生理学的検査をむやみやたらにやらないほうがよいことも力説している.症例提示を通して鑑別診断をし,典型的で重要な症候はビデオ添付されたもので実際に示されており,読者にとっては神経症候学のバイブルとしてよい秀逸な本であろう.
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