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はじめに
頸椎椎弓根螺子(cervical pedicle screw:CPS)は,頸椎固定術のアンカーとしてlateral mass screwやlaminar screwと比して力学的な固定性が強く,有用な固定材料である5,6,20).しかし,頸椎は椎弓根が細いこと,可動性が大きいことから操作中椎体が動きやすいなどの理由から,その刺入は技術的に難しい.さらに,頸椎は胸腰椎とは異なり,解剖学的には椎骨動脈(vertebral artery:VA)が走行しており,CPSの不適切な設置は神経組織の損傷や固定性の低下のみならず,VAの損傷を引き起こす可能性があり,これはときに致死的な合併症につながる.
Navigation systemの登場はCPSの設置精度を飛躍的に向上させた.それまでの透視装置を用いたCPSの設置精度は56.5%〜87.7%と報告されているが10,12,21),navigation systemでのそれは概ね95%以上と報告されている1,17,22).透視装置を用いて設置したCPS 3,055本,navigation systemを用いて設置したCPS 1,223本を調査したTarawnehら18)のsystematic reviewでは,navigation system補助下のCPS設置は透視装置より有意に精度が高く,またCPS関連神経血管損傷も有意に低い(0.3% vs. 1.9%)ことを示し,CPS設置におけるnavigation systemの有用性を示した.
脊椎手術用ロボット(robotic guidance system:RGS)について,最初の文献的な記載は2004年である19).機械的にはRGSはnavigation systemをもとにしているが,そのコンセプトは根本的に異なる.Navigation systemは,手術器械と骨組織の3次元的位置関係をモニターに提示することで術者のPS設置をナビゲートするが,これは視覚的なナビゲーションといえる.一方RGSでは,計画したPSの軌道(trajectory)がrobotic armに取りつけられたカニューレやドリルガイドを通して直接術野で提示される.術者は提示されたtrajectoryに沿ってpilot holeを作製し,最終的にPSを設置する.つまりは空間的なナビゲーションといえる.
2010年以降,RGSのPSの臨床成績が報告されるようになり,胸腰椎においてはnavigation systemと比して同等,もしくはそれ以上の精度でのPS設置が可能であるとする研究が多い.近年,頸椎においてもRGSによるCPS設置の精度は徐々に報告されるようになってきているが,まだその数は少ない.
当施設では,2022年3月からCirq®(BRAINLAB)を導入した.腰椎変性疾患におけるPS設置への使用から始め,徐々に頸椎にその適応を広げている.本稿では,Cirq®を使用したCPS設置の手順や留意点を紹介するとともに,その精度を検討した.
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