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はじめに
ロボットとはそもそもどう定義されるものであるか.ロボットという言葉はチェコの作家カレル・チャペックが発表した戯曲に登場しており,チェコ語で労働を意味するrobotaや,スロバキア語で労働者を意味するrobotnikなどからの造語であると考えられている.この戯曲の中では人造人間アンドロイドに近いものとして描かれている.20世紀中盤からは米国の作家アイザック・アシモフがSF小説の中に多くのロボットを登場させ,「ロボットは,人間に危害を加えてはならない」「ロボットは,人間に与えられた命令に服従しなければならない」「ロボットは,自己を守らなければならない」といったロボット三原則を示した.現在どのように定義されるのであろうか.経済産業省ではロボットを「センサー,知能・制御系,駆動系の3つの要素技術を有する,知能化した機械システム」としている.日本工業規格(JIS)では,「二つ以上の軸についてプログラミングによって動作し,ある程度の自律性をもち,環境内で動作して所期の作業を実行する運動機構」と定めている.また,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2014年に発表したものでは,完全に一般性をもった定義は存在しないとしたうえで,「移動性,個体性,知能性,汎用性,半機械半人間性,自動性,奴隷性の7つの特性を持つ柔らかい機械」としている.どうやらその定義は曖昧ではあるが,ある程度の知能性を有する移動可能な機械の塊,とでもいうのが適当と思われる.
医療用ロボットとされるものには,手術ロボット,リハビリロボット,診療ロボット,調剤ロボット,補綴ロボットの5つに分類される.手術ロボットとは手術を補助するものであり,人間には見えないところまでカメラを通して手術の安全性を高め,また人間にはできない動きを実現することで医師のスキルに影響されない手術の実現を目指し,患者の負担を減らしている.
では,脊椎手術において手術支援ロボットに期待されるものは何であろうか.歴史的には1950年代から始まった椎弓根スクリューの刺入に,このロボット技術が導入された16).ロボット導入に先立ち,ナビゲーションシステムがこの領域に導入され,経皮的スクリュー刺入などにナビゲーションが使用されてきた1,5,15,17,19,22).椎弓根スクリューの誤刺入は重大な合併症につながり得るものであるから,この椎弓根スクリューの刺入が脊椎手術ロボットに課せられた主たる課題となった.つまり脊椎手術ロボットに求められるものは,安全で正確な椎弓根スクリューの刺入である.そしてそれは当然のことながら,従来のフリーハンド,透視下,CTガイド下のスクリュー刺入より優れたものでなくてはならない.初期の脊椎手術ロボットによるスクリュー刺入の成績は,従来法と変わらないといった程度のものであったが22),現在までさまざまな脊椎手術ロボットが米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けており,最新型として現在市場にあるものは,Excelsius GPS(Globus Medical,Audubon,PA,USA)(図 1),Mazor X(Medtronic,Dublin,Ireland)(図 2),Cirq(Brainlab,Munich,Germany)(図 3)などがある10).これらの手術成績についての直接的な比較検討は行われていないが,その機能については公表されているデータがあり,これをもとに考察する.
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