パーキンソン病の歩行と姿勢異常—脳神経外科の立場から

Gait Disturbance and Postural Abnormalities in Parkinson's Disease: A Neurosurgical Perspective

はじめに

　パーキンソン病（Parkinson's disease：PD）は，筋固縮，安静時振戦，無動，姿勢反射障害を4大運動症状とする神経変性疾患である．高齢化に伴いPDの有病率は世界的に上昇しており，日常診療で遭遇する機会も多い^3）．4大運動症状のほかにも症状は非常に多彩であり，自律神経障害，精神症状，高次脳機能障害，感覚障害，睡眠障害などの非運動症状から，薬剤内服による合併症で生じるジスキネジアや症状の日内変動も重要な症候である．本稿のテーマである歩行障害は，postural instability and gait difficulties（PIGD）と表されるように，姿勢反射障害，転倒などをしばしば合併する^1）．また，姿勢異常（postural deformities）も伴い，これらによりADLやQOLが大きく低下する．脳神経外科におけるPD治療は，進行期PDに対して行われる脳深部刺激療法（deep brain stimulation：DBS）や薬剤抵抗性の安静時振戦に対して行われる集束超音波治療（MR guided focused ultrasound surgery：MRgFUS）である．本稿では，DBS症例や脊椎疾患合併症例を中心に，進行期PDの歩行障害・姿勢異常，臨床上の注意点を述べる．