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特集 脊髄および末梢神経鞘腫瘍のすべて
—その他の脊髄神経鞘腫の治療—NF2関連神経鞘腫の腫瘍微小環境と免疫療法の可能性
Tumor-microenvironment and Immunotherapeutic Approach for Neurofibromatosis Type 2
田村 亮太
1
,
戸田 正博
1
Ryota TAMURA
1
,
Masahiro TODA
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Keio University School of Medicine
キーワード:
神経鞘腫
,
schwannoma
,
神経線維症2型
,
neurofibromatosis type 2
,
免疫療法
,
immunotherapy
Keyword:
神経鞘腫
,
schwannoma
,
神経線維症2型
,
neurofibromatosis type 2
,
免疫療法
,
immunotherapy
pp.371-376
発行日 2023年6月30日
Published Date 2023/6/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002202092
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はじめに
神経鞘腫は,末梢神経の軸索周囲を覆うシュワン細胞の増殖から生じる良性腫瘍である.40〜60歳代の成人にピークがあり,頭蓋内に発生する神経鞘腫は比較的頻度が高く,原発性脳腫瘍の約10%を占めるとされる.頭蓋内神経鞘腫の大部分は前庭神経から発生する21).脊髄では,脊髄神経後根に由来する感覚神経に発生することが多く,特に胸椎・腰仙椎部に生じ,硬膜内髄外腫瘍の代表格である15).治療は手術や放射線治療があり,ガンマナイフやサイバーナイフを含めた定位的放射線治療の長期成績の報告も増え,その成績は向上している24).
孤発性の神経鞘腫に加えて,神経線維腫症2型(neurofibromatosis type 2:NF2)関連の神経鞘腫がある.さらに最近では,NF2変異の体細胞モザイクといった概念も提唱されている34).NF2は,両側性前庭神経鞘腫を主徴とする遺伝性疾患で,若年より聴力が障害される,前庭神経以外にも頭蓋内や脊髄に無数に神経鞘腫を生じ,髄膜腫や上衣腫などの腫瘍も併発する34)(図 1).きわめて難治性の希少疾患で,手術では神経損傷の可能性が高く,多発腫瘍に対して積極的に行うことは現実的でない.放射線治療の成績は向上しているが,大型の腫瘍には適応されず,多発腫瘍を制御することはやはり困難で,悪性転化のリスクもまれながら報告されている37).そのため,新たな治療戦略が求められている.
本稿では,難治性疾患であるNF2において,近年注目を集める腫瘍微小環境(tumor-microenvironment:TME)を中心に概説し,われわれの行っている免疫療法を用いた治療戦略を報告する.
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