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はじめに
脊髄損傷は損傷部位や程度によって運動障害や感覚障害,膀胱直腸障害などさまざまな機能障害を生じるが,その中で痛みを生じる場合がある.脊髄損傷患者の65〜85%で痛みを経験するとされており,そのうち1/3は激しい痛みであったと報告されている20).脊髄損傷患者にとって,痛みはリハビリテーションや日常生活動作の妨げとなり,生活の質が低下する要因でもある.脊髄損傷後の痛みの中でも,脊髄損傷によって体性感覚神経系が直接的に障害されて生じてくる痛みは,中枢性神経障害性疼痛の一種であるが,この神経障害性疼痛が,決め手となる有効な治療法がなく,特に治療が難しい難治性慢性疼痛である.このような神経障害性疼痛に対しては薬物治療がまず行われるが,十分な痛みのコントロールができない場合も多く,そのような場合にニューロモデュレーション療法が検討される.ニューロモデュレーションとは,国際ニューロモデュレーション学会で「目的とする特定の神経部位に,電気刺激や磁気刺激,化学物質などの刺激を与えることで,神経細胞およびグリア細胞の活動を含んだ神経系の機能を調節すること」と定義されている17).外科的なニューロモデュレーション療法としては,歴史的には一次運動野刺激療法や脳深部刺激療法が行われてきたが,近年の通常診療では脊髄硬膜外刺激療法が行われており,本原稿執筆時には植え込み髄注ポンプによるモルヒネ髄注療法が薬事承認済みで保険適応待ちである.その他,非外科的なニューロモデュレーション療法として,反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)や経頭蓋電気刺激などがある.本稿では,脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対するrTMSについて概説する.
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