脊椎外傷患者の周術期管理と術前説明のポイント

Perioperative Management and Informed Consent for Spinal Trauma

はじめに

　一般的に外傷は，予期せず，いつどこにおいても一瞬にして発生する傷病である．患者やその家族は一瞬にして起こる状況の変化に対応できず，肉体のみならず精神的にも動揺し，正常な思考判断ができない状況に陥ることがある．脊椎・脊髄損傷は，単なる神経障害ではなく，全身の臓器障害を引き起こす病態であり，さらに合併損傷の存在が診断・評価・治療を困難にする．脊椎・脊髄損傷の治療においては，脊椎への再建治療のみならず，合併症の予防・管理と，合併損傷の診断・評価・治療も同時期に並行して行う必要があり，患者・家族に対し，限られた時間で信頼関係を構築し迅速な治療を行わなければならない．

　本稿では，全身の臓器障害を伴う危険性のある脊椎外傷患者の周術期管理と術前説明のポイントについて，当科の方針を踏まえて報告する．