Japanese
English
連載 卒後研修講座
高齢者の脊椎・骨盤外傷に対する診断と初期治療
-――救急外来における初診時対応
Diagnosis and initial management for spinal and pelvic injuries
伊藤 康夫
1
,
瀧川 朋亨
1
,
森田 卓也
1
,
梶木 裕矢
1
Y. Ito
1
,
T. Takigawa
1
,
T. Morita
1
,
Y. Kajiki
1
1神戸赤十字病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Japanese Red Cross Kobe Hospital, Kobe
キーワード:
spine and spinal cord injury
,
pelvic injury
,
initial management
Keyword:
spine and spinal cord injury
,
pelvic injury
,
initial management
pp.717-727
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_717
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
脊椎・骨盤は体幹の支持性・安定性に寄与し,神経組織・骨盤内臓器を抱合・保護し,可動性を有している.二足歩行を行うヒトとして,中核をなす組織の一つである.脊椎・骨盤外傷は,単なる骨折にとどまらず,神経障害や臓器障害を引き起こす病態が発生する危険性があり,救命処置を要することもある.高エネルギー外傷では,合併損傷の存在が診断・評価・治療を困難にする.
さらに,近年,わが国は急速なスピードで超高齢社会を迎えており,転倒などの低エネルギー外傷に伴う高齢者の頚髄損傷(非骨傷性頚髄損傷)や,骨粗鬆症を基盤にした脆弱性骨盤輪骨折が増加している1,2).高エネルギー外傷であれば,救命センターへ通常搬送されるが,一般外来や二次救施設の救急外来を受診する低エネルギー外傷による高齢者の脊椎・骨盤外傷の診断・治療の重要性が増している.
本稿では,初期研修医を含めた整形外科専攻医に向けて,高齢者の脊椎・骨盤外傷に対する診断と急性期治療について,特に救急外来・初診時の診療でよく遭遇する疾患の診断と初期治療について自験例を交えながら述べる.

© Nankodo Co., Ltd., 2025