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はじめに
[1]小児頸椎手術の頻度
脊椎手術全体における小児患者の頻度はまれであり,当科所属の東大脊椎グループの2017年4月からの約3年半における脊椎手術15,803件を実施時年齢別に集計した結果,10歳代は2.5%(392件),10歳未満ではわずか0.8%(119件)であった.これらの手術は実施施設も限られており,特に10歳未満の脊椎手術は参加14施設中3施設に集中していた.また,10歳未満の脊椎手術119件のうち,その約2/3(84件)は早期発症側弯症に代表される脊柱変形手術症例であり,頸椎手術はわずか1/3(35件)を占めるのみであった.
[2]対象疾患,患者背景の特殊性
成人と小児では,頸椎手術の対象疾患は大きく異なる.成人では変性疾患が多いが,小児に変性疾患は起きにくく非変性疾患が圧倒的大部分を占める.具体的には,環軸椎亜脱臼,陳旧性環軸椎回旋位固定,腫瘍,外傷,Chiari奇形などである.中でも,何らかの先天性疾患を背景とした頭蓋頸椎移行部奇形に起因する環軸椎亜脱臼が多い.筆者の経験では,背景疾患としては,Down症を筆頭に,点状軟骨異形成症,変容性骨異形成症,先天性脊椎骨端異形成症などの骨系統疾患やその他の染色体異常症などの頻度が高いが,初めて耳にするようなきわめてまれな疾患も珍しくない.これらの患児は,脊椎病変のみならず,原疾患に起因したその他の障害(心血管障害,内科的疾患,関節病変,精神発達遅滞など)を有していることも多い.
また,環軸椎亜脱臼の場合,術前の神経症状の重症度には幅があり,まだ神経症状が出現していないものから呼吸機能障害を含む重度の四肢麻痺を呈しているものまで,中には生下時から重篤な脊髄損傷状態という患児も手術対象となることがある.
本稿では,小児頸椎手術において比較的頻度の高い環軸椎亜脱臼に対する上位頸椎固定術に焦点を当て,筆者が心がけている術前準備,患者説明,周術期管理のポイントについて述べる.
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