Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
日本は超高齢社会に突入し,多くの診療科において治療対象患者の高齢化が進んでいる.整形外科でも同様であり,整形外科手術を受ける患者の半数以上が60歳以上といわれ20),今後もその割合が増えると予想される.脊椎脊髄手術も同様であり,2011年の脊椎脊髄手術を受けた患者の最多年齢層は70歳代(28.5%)と報告されている17).治療対象の高齢化に伴い,併存基礎疾患に対して,抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者が増加している15).
冠動脈疾患患者のうち,経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)後の患者の5〜25%は,PCI後5年以内に非心臓手術を受ける可能性がある26)が,PCI後の患者は,非心臓手術後早期の心血管イベントのリスクが高いと報告されている6,15,57).その中で,PCI後の患者を含め,冠動脈疾患患者の非心臓手術を安全に施行するための努力が求められており,脊椎脊髄手術を含む整形外科手術も同様である.そんな中,2020年に日本循環器学会から「冠動脈疾患患者における抗血栓療法 ガイドライン」が示され38),2022年に「非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」の改訂版が出された16).
冠動脈疾患患者の多くは,抗血小板薬や抗凝固薬を内服しているため,非心臓手術の際には休薬するほうが出血のリスクは低下するが,休薬することで,心血管イベントなどのリスクが上昇する.これらの薬剤の休薬の可否について明確なコンセンサスは得られていない.整形外科手術の中でも,脊椎脊髄手術は緊急手術が比較的多く,休薬できない場面も想定され,術後の硬膜外血腫発生に注意が必要である.また,近年では手術侵襲もさまざまである.そこで,整形外科手術のうち,特に脊椎脊髄手術の周術期の抗血小板薬,抗凝固薬の休薬について,文献的考察を行ったので報告する.
Copyright © 2022, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.