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はじめに
日本は超高齢社会を迎え,脊椎外科医が対応する高齢者脊椎疾患も増加しており,成人脊柱変形に対する治療機会も増加している.海外からの成人側弯症に限った報告においても,成人における側弯症有病率は1.4〜32%とされており,高齢ボランティアに限ると60%以上の有病率であったという報告も認められる4,13,14).よって,日本のみならず世界的にも長寿化が進んでおり,脊柱変形を有する成人患者の数は増加しているといえる.
またさらに,成人脊柱変形は成人側弯症のみならず,骨格が成熟した症例での脊柱変形すべてを含んでおり,成人期の多様な脊柱変形の総称といえる1).一般には,椎間板変性を主体とする側弯変形や後弯変形を指すことが多いが,小児期の側弯症の遺残・進行,脊椎手術後に生じる医原性変形,感染や椎体骨折後の変形,成人期の症候群性側弯症など非常に多くの病態が原因となり,ときとして複数の原因が合併するために,複雑な変形となることもある.そのため,脊柱変形の形態も,冠状面での側弯変形,矢状面での後弯変形,腰仙椎アライメントの悪化,椎体自体の変形,および全脊柱アライメント異常など,さまざまな変形が組み合わされているといえる1).
成人脊柱変形の原因・病態に応じて変形の種類を特定することは難しいが,Amesら2)は人工知能を用いた解析において,成人脊柱変形をyoung adult(壮年期の初回手術例),old first(壮年期以降の初回手術例),old revision(再手術例)の3群に分類し,各群の特徴をわかりやすく説明している.Young adultとold firstを比較すると,50歳までのyoung群では,腰仙椎アライメント不良が少なく,主に側弯変形を主体とする一方で,50歳以上のold群では,腰仙椎アライメント不良を伴い,矢状面・冠状面ともに全脊柱アライメント不良を伴う症例が多いことを報告している.Old群で腰仙椎アライメントや全脊柱アライメントが悪化する理由には加齢性変化が大きく関わっていることが推測でき,椎間板や筋・骨などの支持組織の加齢性変化がバランス不良と大きく関わっている可能性がある.
本稿では,成人脊柱変形の原因と自然経過について自分なりの考察を行うが,成人脊柱変形の病態・原因は多種多様であり,自然経過を画一的に説明することは困難である.そのため,young first群での側弯変形の進行,old first群での脊柱アライメント悪化と変性変化の関係について自験例を交えながら解説する.
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