Japanese
English
特集 Failed back surgery syndromeへのアプローチ—診断と対処法
減圧手術ではよくならないfailed back surgery syndromeに対する治療—Pain clinicの立場から(内服治療も含めて)
Treatment for FBSS after Spinal Decompression
丸山 一男
1
,
横地 歩
1
,
坂本 正
1
Kazuo MARUYAMA
1
,
Ayumu YOKOCHI
1
,
Tadashi SAKAMOTO
1
1三重大学医学部附属病院麻酔科/痛みセンター/緩和ケアセンター
1Department of Anesthesiology, Mie University Hospital
キーワード:
failed back surgery syndrome
,
FBSS
,
痛覚変調性疼痛
,
nociplastic pain
,
中枢性感作
,
central sensitization
Keyword:
failed back surgery syndrome
,
FBSS
,
痛覚変調性疼痛
,
nociplastic pain
,
中枢性感作
,
central sensitization
pp.507-514
発行日 2022年2月21日
Published Date 2022/2/21
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201679
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はじめに
痛みを起こす病態として,侵害受容性疼痛(nociceptive pain),神経障害性疼痛(neuropathic pain)に加えて,痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)という病態が知られつつある6,12,19).単独で発生する場合もあるが,同時発生している場合も多く,痛覚変調性疼痛では,最初は侵害受容性疼痛であったものが,長期化することにより続発するパターンがある.侵害受容性疼痛は,痛覚という感覚により,身体の損傷の存在や損傷が起こりつつある状況を知らせる警告であり,生理的な疼痛である.神経障害性疼痛は,神経そのものの損傷により発生する病的な疼痛である.failed back surgery syndrome(FBSS)はもともと,侵害受容性疼痛の原因の除去を目的とした脊椎手術を受けても,その後に残存する,または新たに発生する痛みである.侵害受容性疼痛であるなら原因があるはずとの考えで,原因追究がなされる.しかし,痛みが長期化すると神経障害性要素が混在し始め,生理的痛みと病的痛みが同時発生した状態となり3),痛覚以外の感覚も過敏になる.こうなると痛覚変調性疼痛の範疇に入ると考えたほうがよい.
痛覚変調性疼痛は,中枢性感作(central sensitization)を伴う場合が多く,非侵害刺激と侵害刺激の双方を痛みと感じてしまう.したがって,侵害刺激がないわけではないため,侵害刺激の原因となる病変があれば,その病変に対する処置を行いつつ,痛みの仕組みを考慮に入れた多職種連携による学際的アプローチが求められる.
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