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はじめに
脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は,本邦では1992年から難治性慢性疼痛に対する治療として実施可能となったが,近年,デバイスの改良による臨床成績の向上と痛み治療に対するニーズの高まりも受けて,SCSは診療科を問わず広く実施されるようになった.SCSは,神経障害性疼痛に対するニューロモデュレーションの1つであり,可逆性と調節性という2つの特徴を有する.まず,SCSでは,脊髄に凝固や切断といった侵襲を加えないため,治療を中止した場合でも,脊髄は治療前の状態に戻ることができる.次に,痛みの経過に応じて,SCSでは刺激条件を調整することが可能である.可能であるというよりも,SCSでは,その効果を最大限に発揮するためには,適宜刺激調整を行っていかなければならない.なぜなら,SCSにより痛みが“一発完治”ということは,まず期待できないからである.SCS装置を植え込んだ後から,本格的な治療が始まるわけで,この点が,ほとんどの脊椎脊髄手術とSCSが大きく異なる点であると強調したい.
Failed back surgery syndrome(FBSS)は,SCSの有効性に関する豊富なエビデンスを有し,SCSの効果が最も期待される疾患の1つとして位置づけられている5).本邦の慢性疼痛に関わる各種ガイドラインにおいても,SCSはFBSSに対する治療として推奨されている(表 1)21,24,25).近年,従来のトニック刺激とは異なり,パレステジアフリーで除痛効果を発揮できる新たな刺激方法として,高頻度刺激16,34,35,37),バースト刺激7-9,33),high-density刺激38),high-dose刺激14,15),differential target multiplexed(DTM)刺激10,11,36)などを実施可能となった(表 2).これらの新たな刺激方法では,FBSS患者においてトニック刺激を上回る除痛効果が報告され,特に,これまで治療が難しかった腰痛に対するSCSの有効性も明らかとなった.パレステジアフリーの刺激方法の中には,疼痛部にパレステジアを一致させる必要はなく,解剖学的指標に基づいてリードを留置する刺激方法も存在し,リードの留置手技がより簡便となった.新たな刺激方法とは別に,海外では,SCSのワイヤレスデバイス3,23)やclosed-loopシステム20,27,28)も登場し,既存のデバイスを上回る有効性が報告されている.
FBSSに対するSCSの変遷や各種刺激方法ごとの代表的な臨床研究に関する解説は別稿29,30)に譲り,本稿では,SCSの適応評価,SCSトライアル,SCS装置の植え込み手術,術後フォローの4つの場面ごとに,実践的な内容を中心に解説したい.
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