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はじめに
脊髄圧迫をきたす病変には,急性圧迫として脊椎の脱臼や圧迫骨折,急性椎間板ヘルニア,血腫など外傷に伴うものや転移性腫瘍,亜急性圧迫として硬膜下または硬膜外膿瘍や血腫,転移性髄外腫瘍,頸椎(まれに胸椎)椎間板ヘルニア,慢性圧迫として骨棘や脊椎症など種々の原因による脊柱管狭窄症などが挙げられる22).そして,これら脊髄圧迫をきたすあらゆる病変が排尿障害をきたし得るものと考えられ,実際に排尿障害をきたした脊髄への急性圧迫病変として脊髄硬膜外腫瘍からの出血1)や妊娠中の硬膜外血腫12),また寄生虫による感染性肉芽腫5)などの症例が報告されている.さらには,胸髄レベルで脊髄を圧迫したラットの実験において,膀胱機能障害の程度は下肢運動障害の程度と相関し,またその圧迫の強いほうが膀胱機能障害はより重度であり,膀胱重量の増加や壁肥厚もより高度であったことが確認されている21).
しかしながら,一般臨床において遭遇頻度の高い排尿障害をきたす脊髄圧迫病変といえば,外傷性脊髄損傷と脊椎変性疾患であろう.後者の脊椎変性疾患は脊椎とその付属組織の形態異常をきたす疾患群を指し,代表的なものとして脊椎症(spondylosis),脊椎椎間板ヘルニア(disc herniation),脊椎管狭窄症(spinal canal stenosis),後縦靭帯骨化症(ossification of the posterior longitudinal ligament:OPLL),黄色靭帯骨化症(ossification of the yellow ligament:OYL)が挙げられる.これらは互いに,あるいは複数のレベルで合併することも多く,加齢とともに進行し,病初期には排尿障害はみられにくいが,脊髄外からの圧迫による直接の障害と循環障害により脊髄障害(脊髄症myelopathy)に進展すると排尿障害が出現するといわれている11).脊髄損傷と腰椎変性疾患(腰部脊柱管狭窄症)については他稿に譲り,本稿では頸椎変性疾患による圧迫性頸髄症と排尿障害について解説したい.
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