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はじめに
小脳皮質は延髄の下オリーブ核に由来する登上線維と,脳幹や脊髄のさまざまな領域に由来する苔状線維から,入力の大部分を受ける.小脳皮質の各領域が担う機能は,苔状線維がどのような情報を伝えるかによって決まる.そのため,小脳は苔状線維の由来に基づいて,前庭小脳(主に片葉小節葉),脊髄小脳(前葉および後葉の一部),橋小脳(大脳小脳)(半球と虫部中央部)の3つの領域へと機能的に分けられる.脊髄小脳路は,四肢や体幹からの固有感覚を小脳に直接伝える伝導路であり,脊髄小脳へと苔状線維を投射する4,23)(図1).小脳皮質は,脊髄小脳路からの入力をほかの神経領域からの入力と統合し,その情報をプルキンエ細胞によって小脳核や前庭神経核に出力する.小脳核のうち,主に室頂核や中位核(球状核と栓状核)が脊髄小脳からの入力を受けており,これらの小脳核が脳幹網様体,赤核,視床に出力することで,脊髄へと投射する下行運動系(網様体脊髄路,赤核脊髄路など,ただしヒトの赤核脊髄路は痕跡的)を調節する.
代表的な脊髄小脳路として,下肢からの感覚を小脳に伝える後脊髄小脳路と前脊髄小脳路,上肢からの感覚を伝える副楔状束核小脳路と吻側脊髄小脳路が知られている(表1).また,上位頸髄に存在する中心頸髄核も,頭頸部の感覚を受けて小脳に投射する.これらの脊髄小脳路の起始核以外にも,小脳投射ニューロンが脊髄に分布しており,細胞体の位置と小脳に向かう上行線維の経路によって,いくつかの群に分類される20,21,26).各ニューロン群の異なる投射様式は機能差を反映すると考えられているが,その詳細は不明である.本稿では,脊髄小脳路のうち,起始核や小脳皮質への投射様式について基礎的理解が得られている経路を述べる.
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