特集 脊椎硬膜病変—最近の話題
特集にあたって
谷 諭
1
1新百合ケ丘総合病院脊椎脊髄末梢神経外科
pp.833
発行日 2020年9月25日
Published Date 2020/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201489
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髄液漏という疾患概念が注目を集めて久しくなりました.この疾患は「脊椎硬膜に裂け目(穴)ができている」が基礎病態でありますが,その病態を共有する疾患は多くありそうです.その1つは,脳表ヘモジデリン沈着症を生じ得る硬膜欠損部からの血液成分のくも膜下腔への流入でしょう.一方,硬膜外に囊胞を形成したり,はたまた脊髄そのものが陥入するような状態(脊髄ヘルニア)も知られていましたから,このような病態をduropathyと包括することが提唱されています.まれとはいえ,このようなpathological entityが提案されたことで,硬膜には病気があるということは間違いありません.
考えてみますと,われわれ脊椎脊髄外科医は,骨,軟骨,靭帯という脊椎を構成する組織と,脊髄,神経という神経組織はこれまで扱ってきたわけですが,その脊椎と神経組織の境をつくっている硬膜の病変はあまり注目されませんでした.硬膜は,動く臓器である背骨の中でも,伸びたり縮んだりダイナミックな動きをして,脊椎の悪性新生物の浸潤から神経組織をガードしてくれる組織であります.悲しいことに,手術の際には,硬膜は「縫合すれば,適当につくであろう」と変に信頼された組織ですが,そこにも落とし穴(本当に穴)もあるかと思いますし,われわれが日頃,手術で必ずつくっている硬膜外の癒着にも,動く臓器の中では問題が起こり得ると考えるのが当然ではないでしょうか?
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