特集 脳脊髄液—どこからどこへ
特集にあたって
谷 諭
1
1東京慈恵会医科大学脳神経外科
pp.693
発行日 2015年8月25日
Published Date 2015/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200186
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脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)は脳脊髄の組織間液であるという概念が近年になり受け入れられているものの,その生理的役割は依然不明な点が多いようです.また,その産生から吸収,そして循環動態(循環と称してはいけないかもしれませんが,ここでは一般向けにそのまま用います)に関してもこれまでの解釈の誤りなどが正されつつありますが,依然,精力的な研究をもってしても解明されていないのが現状です.残念なことに,トレーサーを用いてもCSFそのものの循環を把握しているとはいえず,さらには解析が難しいとされる流体力学的要素,そして明らかな動物種による違いという問題も立ちはだかっているようです.
このように,基礎的研究の進歩が難渋している中で,髄液減少症という新しい疾患概念やその他種々の髄液循環に関連する疾患が時として社会も巻き込み注目されることで,基礎的背景に先行して臨床経験の積み重ねで治療方法などが確立してしまうことに不安を覚えてしまうことも事実です.われわれ臨床家には,病態生理を礎とした適切な治療方針を立てることが求められていることは自明の理です.その意味から,今回の特集では,脊髄神経根での吸収も含めたCSFの産生・吸収,最近のMRを用いた髄液循環動態の検討,そしてCSFの役割などをあらためて最新の知見を含めて紹介していただきました.論文を拝読していきますと,本当に素晴らしい報告ばかりで感嘆しました.普段,臨床現場で接している読者の皆様も,CSFの不思議さと重要さをあらためて確認されるのではないかと思います.
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